週刊 日本を歩く

管理人が日本で見つけた物をフリージャンルで紹介します。 「週刊」と銘打ってはいますが、更新頻度はまちまちです。 日毎もあれば月毎になることもあります。 なにはともあれ、お付き合いください。

苫前町郷土資料館 小さな町の歴史と文化

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仕事も忙しくなり、前回の記事から随分時間が経ってしまった。

やっと苫前町郷土資料館の記事を上げることが出来る。

 

 

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築別・羽幌炭砿で時間を潰し、資料館に到着したのは午前11頃であった。

 

 

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建物は年季が入っているが、それもそのはず。

もともと町役場として1928年に建てられ、1984年まで使われていたのだ。

新庁舎ができて以後は現在の資料館として運営されている。

 

入場料は、町外からの高校生・一般来訪者で300円。見ごたえは十分だ。

営業時間など、詳しいことは以下のリンクを参照。

北海道苫前町 | 苫前町郷土資料館

 

 

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玄関の扉を開けていきなりこれだ。

大きさは170センチくらいだろうか。

 

 

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横から撮影。

玄関からの光を浴びてラインが浮かび上がる。

 

 

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この熊は「渓谷の次郎」と呼ばれた6歳のオスで、昭和60年に仕留められた体重350kgの堂々たる体躯だ。

 

この剥製の後ろに受付があり、お金を払って内部を見学する。

写真などは自由に撮影してかまわないということであった。

 

 

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建物は入り口を入って左右に展示場が広がる左右対称形だ。

これは建物正面向かって右側の展示場。主に苫前町の歴史と文化に関する展示がある。

 

 

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そしてこちらが入って左側の展示場。

羆と「三毛別羆事件」に関する展示がまとめられている。

反対側の展示場と比べて展示物は少ないのに、この存在感である。

 

 

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展示場の半分ほどが三毛別事件の再現セットに当てられている。

手前の鹿は事件とは関係ない。

 

 

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セットの内部。

今まさに羆が壁を突き破って侵入せんとする様子が再現されている。

 

今や事件については各所で調べられており、書籍なども出ているのでここではあえて説明しないことにする。

いずれにせよ、こんな状況に出くわしたら人間に出来ることはほとんど無いと言っていいだろう。

 

 

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こんなに恐ろしい現場を鹿が外から悠々と眺めている。

 

 

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そしてこいつだ。

本資料館で最大の存在感を放つ、その名も「北海太郎」。

現在のところ、日本最大の羆とされている。

 

 

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入り口の「渓谷の次郎」を優に超える体長2.43m、体重500kg。

18歳のオスだった。

幻の巨熊としてハンターに追われること実に8年。

羽幌町の山中で冬眠しているところを昭和55年に射止められた。

 

さきほどまで自分がいた築別にこいつがいたのである。

考えるだけでも恐ろしい。

 

 

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カメラの設定を間違えていたとは口が裂けても言えない。

 

撮る角度によって表情が変わるのが興味深い。

下から煽ると口周りの凶暴さがにじみ出るのだが、正面から撮ると思いのほか愛嬌のある顔だ。

 

 

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とはいえ、こんなやつに襲われたらひとたまりもないだろう。

 

よく「一番強い動物は何か?」というテーマが議論されることがあるが、筆者は羆がかなり有力だろうと踏んでいる。

牙も毒も使わずに腕力だけで相手を殺せて、体は大きく、その割に時速50km以上で走ることができ、実は木登りや急勾配の登り降りも得意とあっては、なかなか勝ち目のある動物はいないだろう。

 

 

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なお、熊に襲われた際に現在最も有効だと考えられているのは、「目を逸らさずにゆっくり後ずさりする」ことだという。

ただし過去に、「この対処をしている途中で足を踏み外し、驚いた熊が襲い掛かってきた」という事例があるため、なんとも言えないと筆者は思う。

 

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羆が人間に襲いかかる理由は主に「空腹」と「敵対」がある。

食べるためか、排除するためか、だ。

 

 

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死んだふりは今となっては論外だそうだが、背中を見せて逃げたり、突然走り出したりするのもアウトだ。

要するに羆を驚かせたり興奮させるような振る舞いはほぼ全てNGということだ。

 

 

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しばらく前に、海外の男性が自分に向かって突進してきた熊を大声で威嚇し、熊が慌てて森へと逃げていく、という動画が話題になった。

 

この方法が毎度必ずしも奏功するとは限らないが、最終手段程度に記憶しておくのもいいだろう。

結局のところ、「熊がいそうなところにはいかない」という予防手段が最高の対処法なのだ。

過去の羆事件の多くは、羆出没注意報が出ていたにも関わらず無視して山中に入り、その結果襲われるという自業自得的なものも多かった。

 

 

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筆者は動物愛護団体のシンパではないが、振り返ると、「そもそもこの大地は羆たちのものだったのだな」という思いもある。

 

 

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歴史や文明が発達し、筆者自身がその恩恵にあずかっている今、「自然をかつての姿に」などという非現実的考えは一切抱かないが、悲劇的な歴史を繰り返さないようにする責任は人間側にあるようにも思うのだ。

 

 

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なお、万が一この記事で得た知識で羆関連のトラブルが起きても、筆者は一切責任を負えないのでそのつもりで。

どうしても山や森へ入らなければならないときは、専門家の意見を取り入れ、正しい装備と対処法で挑んでもらいたい。

 

 

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建物は更に廊下で奥へとつながっている。

その途中にはかつての市長室があり、ここにも剥製などが展示してある。

 

 

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万国旗と羆の剥製。

よくわからない取り合わせだ。

 

 

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レトロと言いたいが、壁紙などボロボロになっていているのが気にかかる。

 

かつてはここで三毛別羆事件に関するビデオテープが流されていたらしいが、この日はやっていなかった。

 

 

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やけに雑な位置に飾られた鹿の首。

右は多くの受賞盾。

 

 

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廊下は奥へ伸びる。途中には古いタンスや棚が並べられている。

 

 

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廊下を抜けたところ。

ちょっとしたホールが現れ、正面奥に展示場。

右前方の扉は開くような雰囲気ではなかった。

 

扉の更に右側には別の部屋があり。

 

 

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ただし中はもぬけの殻。

 

外には「古代の里」という古い住居を展示した広場がある。

そこを見て回ることはなかったが、縄文文化の家、擦文文化の家、アイヌの伝統住居「チセ」などが復元展示されているそうだ。

 

 

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こちらは奥の展示場。

あまり広くはないが、北海道の古代文化と発展に関する展示がある。

 

 

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ひときわ存在感を放つのは中央のこれ。

横の説明板によると「獲物を狙う擦文人」ということだが、どう見てもトドに驚いて尻もちをついているようにしか見えない。

 

 

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なお、このトドは1989年の夏に苫前町の力昼(りきびる)の海岸に打ち上げられたものらしい。

 

築別炭砿の記事に出てくる「太陽小学校」に関連するが、廃墟探索写真の中にこれと同じような剥製が写っているのを見たことがある。

もしやと思って確認してみたが、顔の向きや表情が違っていたため、別の剥製だったようだ。

一方は町の資料館で人目に触れ、いま一方は廃墟の中で朽ちていくのであった。

 

 

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現地訪問の前に軽く立ち寄ってみた、町の小さな資料館。

そこには発展してきた北海道の歴史の光と影が記録されていた。

 

都市部からのアクセスはなかなか大変な場所だが、入館料も安く見ごたえは充分なので、ぜひ一度は訪れてもらいたい場所だ。

 

次回は三毛別事件の現地訪問記事となるが、仕事が忙しいためいつのアップになるかまったく不明である。

すでに半年以上前の旅行記であるため、できるだけ急ぎたいとは思っている。

ぜひご期待いただきたい。

 

ではまた、次の記事で。

*1:2016.6.13追記

「栃木県佐野市の山中で登山者の男性が熊に襲われるも、14時間かけて自力で下山し生還する」という事件が発生した。

男性へのインタビュー映像によると、「背中を見せないよう後ずさりしていたが、つまづいてしまい、その拍子に襲いかかられた」ということだった。

再び同じような事例が発生してしまったが、本州ということでおそらくツキノワグマと思われ、それが不幸中の幸いだったかもしれない。

なお、熊鈴は着けていたという。

 

やはり根本的に逃げることは叶わないので、「刺激しないようじっとしている」、「荷物を取られそうになったら大人しく渡す」、「熊が去るのを待つ」という受動的防衛がベターだろう。

 

最近では「熊よけスプレー」という強力なツールも出てきている。

唐辛子に含まれる成分・カプサイシンのパワーを増幅させた噴射液で、(商品にもよるが)人間に当たると失明や猛烈な激痛を引き起こすという、かなりな取扱危険物だ。

特に海外製(ほとんど海外製だが)はグリズリーなどの大型野生動物を撃退するために作られているため、より危険である。

有効な能動的防衛策にはなるが、噴射時間が短い、射程が短い、風向きによっては自分が食らう、といった扱いづらさもあるため、一般人が護身用気分で持ち歩ける代物ではないかもしれない。

なにより恐ろしいのは、一部でこれを「催涙スプレー」代わりに携帯しているものが居るということ(鎮圧どころか殺しかねないパワーがある)。

逆にツキノワグマやイノシシのような野生動物ならば、一部の対人用催涙スプレーでも撃退できるらしい。

 

……といっても確約はできないので、やはり必要がなければ森には入らないのが一番である。